ピピピピピ......

目覚まし時計が鳴っている。

まだ眠たいなぁ……。

このまま寝て、今日は学校サボろうかな……。

でも、ずる休みするとお母さんがうるさいし……。

……あれ?そういやいつもならそろそろ聞こえるはずの、お母さんが私を起こす声が聞こえない……。

トントン。

突然、誰かがドアをノックした。

誰だろ?お母さんはいつもノックなんてしないし……。

「河野さん、朝ご飯出来てるよ」

私を呼ぶ声。男の人の声だ。

でもなんで──あ、そっか。

昨日は門限過ぎて帰れなかったから、史乃の家に泊めて貰ったんだった。

じゃあ、やっぱりそろそろ起きないとまずいかなぁ。

私は重たい目蓋を無理矢理開けて、けだるい身体をゆっくりと起こした。

……眩しい。

どうも朝は弱いんだよねぇ……。

それでも何とか自分の目を覚めさせると、なんとなく部屋の中を見回した。

ここは史乃の部屋で、昨日は入ってすぐに寝てしまったために、よく見ていなかったのだ。

何かおもしろいものはないかなぁ……変なポスターとか、オタク系のものとか。

あってどうなる、という訳でもないんだけど……。

──あ、見っけ。

見つけたのは机の上に置いてある写真立て。

写真に写っているのは二人で、一人は史乃。もう一人は可愛い女の子で、史乃の右腕に抱きついている。

……彼女なのかな?

「河見さん、まだ寝てるの?」

ドアの外からの声に、思わず焦ってしまった。

それにしても、こちらが返事をしないうちは部屋に入ってこようとはしないなんて……。

ちゃんとしてるというか、何というか……。

まぁ、そろそろ行かないとまずいか。

ドアノブを握って、回す。

ドアを開けると、そこにはやはり史乃が立っていた。

「変なのが多かったと思うけど、寝れた?」

「うん、全然普通に寝れたよ。ありがとね」

苦笑しながら訊いてくる史乃に、私は笑顔で答えた。

「そっか、良かった。それじゃあ来て、朝ご飯はもう出来てるからさ」

言って、史乃は歩き出す。

私は制服で寝たけど……史乃は着替えたのか。

パジャマでレディの部屋に来るなんて……。

そんなことを考えながら、私は史乃の後についていった。

──あ、良い匂いがしてきた。あの部屋かな……?

案の定、史乃はその部屋に入った。

私も続いて部屋に入ると、そこには──。

想像を遙かに超えた豪勢な朝食が並んでいた。

トーストに紅茶に目玉焼き……おまけにサラダまで。

もしかしたらこれくらいが標準なのかもしれないけど、

基本的に朝食を全くとらない私にとっては十分すぎるくらいだった。

ちなみに、私が朝食を食べない理由はシンプルで、食べる時間があったら寝ていたいから、である。

と言っても、私にだって礼儀くらいはあるから、このことを史乃に教えて朝食を無駄にするつもりはなかった。

とりあえず、トーストにバターとジャムを塗ってかじる。

……おいしい。

たまには朝食を食べるのもいいかもね。

今度は目玉焼きを口に入れた。

うん、これもおいしい。

目玉焼きの下にベーコンか……こんな料理法もあるんだ。

……まぁ私は料理を全くしないから関係ないけどね。

紅茶を飲みながら、私は料理から顔を上げた。

史乃は今、トーストにかぶりついている。

あ──。

「──史乃、頬にジャムがついててマヌケだよ」

何となく言っただけだった。

しかし、返ってきたのは予想もつかなかった言葉。

「ん?じゃあ取ってくれない?」

……は?

真顔であんたは何言ってるの?

そんなこと言うのは、恋人に対してだけにしてって……。

「朝っぱらから、そういう冗談は言わないでくれる?恋人でもないのに」

「じゃあ、付き合ってよ」

史乃は、真顔であり得ないことを恥ずかしげもなしに言い放った。

思わず溜息が出る。

「馬鹿みたい、くだらないこと言わないで」

「んー、こっちは大真面目なんだけどなぁ」

言いながら、史乃は自分の頬についているジャムを手で拭って舐めた。

説得力ないっての……。

大体、その仕草はまるで──。

「──子供みたい」

その後、大した会話もなく食事は終了し、私は一足先に学校へと向かった。

 

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