悩みが解決?どんな悩みだったんだろ?
……いや、止めておこう。
昔、友達の悩みの内容を無理矢理訊こうとして、嫌われた経験があるんだった。
誰にも知られたくないことが、人には一つはあるものなのだから。
それより今気にしなければいけないのは、今晩の寝床。
最終手段は史乃の家に泊めて貰うことだけど……それは出来れば避けたい。
史乃と仲が良い訳でもないのに、そんなこと頼み辛い。
「それじゃ、俺はそろそろ帰るよ」
「──!」
史乃に今帰られると、最終手段がなくなってしまう。
背に腹は代えられない……か。
「史乃、今日あんたの家に泊めてくれない?親に閉め出し喰らっちゃってさ」
予想通り史乃は目を丸くして、両手を合わせてる私を見た。
さっきまで話したこともなかった相手。
しかも女子が、突然泊めてと言ってきたのだ。
当然といえば当然か。
「別にいいけど……女子が寝れるような環境じゃないと思うよ?」
寝れるような環境じゃない?……意味深だなぁ。
ま、平気でしょ。
「うん、それでもいいよ。気にしないからさ」
私は気軽に返事をした。
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「どーぞ、ここが家だよ」
史乃が連れてきたのは、やや大きいが至って普通の家。
「入って、さっきの言葉の意味が判るから」
言って、史乃は玄関を開けた。
……なるほど、ね。
引っ越し直後、という感じかな?
段ボールがそこら中に山積みになっている。
多分、寝る部屋もこんな状態か……。
「理由は判った?それじゃ、俺の部屋に案内するよ」
「えっ?同じ部屋で寝るの?」
さすがの私も驚いた。
ヒノン教の思想があるから、襲われる心配はない。
そんな心配があるなら、男子の家には来てないしね。
それにしても……まさか同じ部屋で寝るなんて……。
それはつまり寝顔を見られるということで、かなり恥ずかしい。
……学校で見られてるって可能性は忘れることにする。
「まさか。空き部屋がないから、俺はソファーで寝るよ」
へぇ……案外紳士じゃん……じゃあ、お言葉に甘えちゃおっと。
「まぁ案内なんて別にいらないんだけど。俺の部屋はあそこ。
段ボールが山積みになってるけど、触らないで。崩れるかもしれないしさ」
そう言って、史乃は一つの部屋を指さした。
……狭そうな部屋だなぁ。
部屋のドアの近くにも段ボールがあって、判りにくいし。
「判った、ありがとう」