悩みが解決?どんな悩みだったんだろ?

……いや、止めておこう。

昔、友達の悩みの内容を無理矢理訊こうとして、嫌われた経験があるんだった。

誰にも知られたくないことが、人には一つはあるものなのだから。

それより今気にしなければいけないのは、今晩の寝床。

最終手段は史乃の家に泊めて貰うことだけど……それは出来れば避けたい。

史乃と仲が良い訳でもないのに、そんなこと頼み辛い。

「それじゃ、俺はそろそろ帰るよ」

「──!」

史乃に今帰られると、最終手段がなくなってしまう。

背に腹は代えられない……か。

「史乃、今日あんたの家に泊めてくれない?親に閉め出し喰らっちゃってさ」

予想通り史乃は目を丸くして、両手を合わせてる私を見た。

さっきまで話したこともなかった相手。

しかも女子が、突然泊めてと言ってきたのだ。

当然といえば当然か。

「別にいいけど……女子が寝れるような環境じゃないと思うよ?」

寝れるような環境じゃない?……意味深だなぁ。

ま、平気でしょ。

「うん、それでもいいよ。気にしないからさ」

私は気軽に返事をした。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「どーぞ、ここが家だよ」

史乃が連れてきたのは、やや大きいが至って普通の家。

「入って、さっきの言葉の意味が判るから」

言って、史乃は玄関を開けた。

……なるほど、ね。

引っ越し直後、という感じかな?

段ボールがそこら中に山積みになっている。

多分、寝る部屋もこんな状態か……。

「理由は判った?それじゃ、俺の部屋に案内するよ」

「えっ?同じ部屋で寝るの?」

さすがの私も驚いた。

ヒノン教の思想があるから、襲われる心配はない。

そんな心配があるなら、男子の家には来てないしね。

それにしても……まさか同じ部屋で寝るなんて……。

それはつまり寝顔を見られるということで、かなり恥ずかしい。

……学校で見られてるって可能性は忘れることにする。

「まさか。空き部屋がないから、俺はソファーで寝るよ」

へぇ……案外紳士じゃん……じゃあ、お言葉に甘えちゃおっと。

「まぁ案内なんて別にいらないんだけど。俺の部屋はあそこ。

段ボールが山積みになってるけど、触らないで。崩れるかもしれないしさ」

そう言って、史乃は一つの部屋を指さした。

……狭そうな部屋だなぁ。

部屋のドアの近くにも段ボールがあって、判りにくいし。

「判った、ありがとう」

 

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