科学技術が進み、クローン技術が特に発達している世界。
だがそこで作られるものは、クローンでありクローンではない。
クローン技術の応用で、クローンではない子供を作ることに成功したのだ。
当然、世界中の人々は喜んだ。
不妊症や無精子症などの患者でも子供を作ることが出来るし、女性がわざわざ辛い思いをする必要が無くなったのだから。
更にクローン技術が発達し、一般家庭でもある程度のお金さえ出せば子供が作れるようになった時、
一つの宗教が突然姿を現した。その名は『ヒノン教』。
ヒノン教のあまりに変わっている思想に、当初は誰も近づこうとすらしなかった。
その思想とは、性行為は汚らわしいという思想。
子供が別の方法で作れる以上、性行為という形をとるというのは快楽を求める行為以外のなにものでもない、
という思想。
当初クローン技術を使っていたのは、本当に一部の人間だけだった。
だが時が経つにつれて、ヒノン教信者はドンドン増えていった。
そしてヒノン教設立から5年。
世界中の人間全てがヒノン教信者となった。
このせいで、人間の身体にも異変が起こり始める。
それは生殖機能の衰弱。
男性では人口の約4/5、女性ではもう生殖機能を持つ者は消えたかに思われた──。